会社が留意すること
社員の肝炎検査や、治療と仕事の両立支援にあたって、
事業者は「個人情報の扱い」と「安全配慮義務」に配慮する必要があります
人事労務担当者や上司は、健康情報などの個人情報の取り扱いに注意が求められます。病気や治療の状況などの情報開示については、必ず本人の意向を確認しましょう。また、肝炎検査や治療を受ける社員をサポートする上司や同僚に対する支援も必要です。また、社員が安全で健康に働けるように配慮することを定めた安全配慮義務にも留意しましょう。
プライバシー保護
肝炎に感染している社員がいることが明らかになった場合に、会社が最も留意しなければならないのは、社員のプライバシーへの配慮です。肝炎については、残念ながら偏見があるのが実情です。会社が社員から収集する情報は必要最低限にとどめるようにすると同時に、社内での当該情報を知る範囲についても、本人同意の上、最低限の範囲に限定される必要があります。
① 情報の収集と同意
取り扱う社員の健康情報等の内容は必要最小限とします。労働安全衛生法で定められた健診項目以外の労働者の健康情報等を収集する場合には、あらかじめ本人の同意を得、本人を通して行うことが望まれます。これらを第三者へ提供する場合も、原則、本人の同意が必要です。
② 健康情報の整理と管理
社員の健康情報等を取り扱う者とその者の権限を明確にします。情報は特定の部署で一元的に管理し、業務上必要と判断される範囲で集約・整理した情報を必要とする者に伝えられる体制が望まれます。
③ 健康情報取扱い規約の作成
健康情報等の取扱いについて、衛生委員会等の審議を踏まえて一定のルールを策定し、関係者に周知することが重要です。また、情報の漏えいがないよう対策が必要です。
根拠となる法律等
【個人情報の保護に関する法律】(平成15年5月制定、平成17年4月から施行、平成29年改正)
個人情報を本人以外の第三者に渡すときは、原則として本人の同意を得ることとしていますが、要配慮個人情報にあたる健康管理の情報は、オプトアウトの手続き(本人の求めによる第三者への提供停止)が認められていません。
【労働安全衛生法第104条の新設】
健康診断並びに第66条の8第1項の規定による面接指導の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならない。とあり、事業所毎に適切な情報管理ができるように、健康情報取り扱い規定を策定することが必要になりました。取り扱い規定の手引きは、以下のURLを参照してください。
安全配慮義務
会社には労働安全衛生法の定めなどにより、社員の生命・身体が業務上の危険から守られるよう配慮しなければならないという義務があります。
社員の心身の健康を害することを会社が予測できた可能性(予見可能性)があり、それを会社として回避する手段があったにも関わらず(結果回避可能性)、手段を講じなかった場合に、安全(健康)配慮義務違反となります。職場内での業務量調整なども、会社の健康診断などと同様に安全配慮義務の一環といえるでしょう。
【労働契約法第5条】
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をするものとする。