成功事例
全国健康保険協会での肝炎ウイルス検査促進の実例 ~健康診断のついで+受検申込の簡素化と自然な後押しが受検率の向上に~
「職域」の中でわが国最大(約3,000万人)の加入者を属する全国健康保険協会(協会けんぽ)では、被保険者対象の生活習慣予防健診時に612円の自己負担(現在は消費税アップにより624円=検査代の70%を協会けんぽが負担)で肝炎ウイルス検査が受検可能ですが、その一受検率は1~2%に留まっており、多くの人が未受検と推定されています。
研究班ではまず、従来の受検票を「簡便化」し、「少額負担で受検可能であることを強調」したものに変更し(図1)、問診票等を一緒に同封したところ、従前の受験約2倍に増加しました(図2)。そこで協会けんぽ福岡支部(約40万人)、埼玉支部(約20万人)で使用してもらったところ、前年比で約7~10倍に増加、約9万人が受検し約700名の陽性者を認めました(図3,4)。この陽性率は、地方公共団体が行う肝炎ウイルス検診とほぼ同等であり(図5)、更に5支部で同様な試みが行われており、今後を多くの地域で改良された、肝炎ウイルス受検申込書が拡がる可能性があります。
検査結果は肝炎ウイルス検査受検者のみへ通知されます。福岡・埼玉支部では約20~30%が3か月以内に受検しています。さらに精密検査に行かない非保険者へ受診勧奨を行い、約50%が受診に結びつき、ウイルス排除に成功された人もおられます。肝炎ウイルスの対する治療は経口薬で、副作用も殆どなく働きながら治療可能です。また、精密検査の結果「肝がん」で手術された方もおられますが、早期発見であったため、術後職場復帰されておられます。
協会けんぽの被保険者は、肝炎ウイルス検査が受検可能であることを再確認して頂き、受検申込書が届いた際、今まで受検されたことがないかたは、是非とも受検してくだされば幸いです。
文責 厚生労働科学研究費 肝炎等克服政策研究事業「職域等も含めた肝炎ウイルス検査受検率向上と陽性者の効率的なフォローアップシステムの開発・実用化に向けた研究班」代表 国立研究開発法人 国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター 肝炎情報センター肝疾患研修室長 是永匡紹